2010年01月31日

【観た人にしか伝わらないネタバレ映画レビュー】

『ディア・ドクター』(2009年 日本)

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(C) 2009『Dear Doctor』製作委員会


『ディア・ドクター』
2009年 日本作品

---- あらすじ/ストーリー ----
村でただ一人の医師、伊野(笑福亭鶴瓶)が失踪する。村人たちに全幅の信頼を寄せられていた伊野だったが、彼の背景を知るものは誰一人としていなかった。事件前、伊野は一人暮らしの未亡人、かづ子(八千草薫)を診療していた。かづ子は次第に伊野に心を開き始めていたが、そんな折に例の失踪事件が起き……。

以下はこの映画に対するコメンタリーとなります。
ネタバレ(画像付き)なので注意してください!


A: さぁ、今回は邦画『ディア・ドクター』だね。

B: 今をときめく西川美和監督の作品ですからね。数年前まで低迷していた邦画も最近かなり活気づいてきましたよね。

A: 劇場の観客動員数もここ最近は洋画よりも増えてるらしいしね。逆に言えば洋画の質が落ちてしまったという見方もできるが。。。

B: ではさっそく本編を振り返っていきましょうか!

A: そだね。

B: オープニング、アコギの音楽をBGMに暗闇の中、小さな自転車ライトの明かりが移動するところから入ります。

A: このあたりでのどかな田舎が舞台であることがよく分かるね。田舎の夜って街灯なんてないから真っ暗で何も見えないもんな。

B: ライトの光だけが移動し、途中白衣を拾ってまた移動して・・・このような入り方はおしゃれな感じを受けます。そしてその後、村中の人たちが刑事を呼んで騒いでるシーンへとつながります。村にいた医者が失踪してしまったようでした。

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A: このシーンの秀ちゃん役の人いい表情してるね。こういうキョトンとした表情好きだなあ。監督の演出が光ってるね、実にいい表情だ。

B: この作品、随所に見られる村人たちの表情がいい味出してますよね、見事です!

A: 刑事たちも始めは田舎での医療活動に飽き飽きして逃げ出した単なる医者のわがままな行動だと思っていた。事件性がないのでさっさと引き上げて次の捜査に・・・と思っていたが、予想以上に動揺している村人たちを見てそれなりに聞き込みをしてみるかと重い腰をあげた。刑事の行動はこの失踪した医者、伊野(笑福亭鶴瓶)を知りたいという単なる興味からきたものだったのかもしれない。

B: ここから伊野が村で今までしてきた過去のシーンと刑事たちが捜査している現在のシーンが交錯しながら物語は進んでいきます。

A: とくに各シーンに関して過去なのか現在なのか明確に示していないところがいいね。普通だったら"数ヶ月前・・・"などとキャプションを入れたり、過去のシーンはセピア調にしたりなどしがちだが、この作品はタイトル以外いっさいそういったキャプションを入れていないのが良い意味で憎い!無駄な情報にいっさい惑わされず、純粋に映像に入り込んでほしいということがひしひしと伝わってくる。

B: そうですね。けっこうキャプションに頼りがちで見てしまうことがありますよね。キャプションに頼りすぎてほとんどキャプションで説明しちゃってる作品なんかもあったりしますよね。

A: まあ、作品のテイストによってはキャプションを使い観る人を誘導させてあげることも大事だが、この作品はぜったいにこのキャプション無しの構成で正解!!

B: ストーリーは相馬(瑛太)が研修医としてこの村の診療所を訪れた出来事へと切り替わります。相馬の運転する高級車と伊野が運転しているバイクとの衝突という出会いが何ともコミカルでいい味わいを醸し出しています。診療所へとやってきた相馬はまだ衝突事故の余韻が残っている中、さっそく助手として働くことになります。

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A: ここの伊野の「ぼく免許ないのよ」というシーン。今後の展開につながるいろんな意味を含んだ印象に残るシーンだね。

B: 伊野は寝たきりの老人が目の前で息を引き取ったとき、老人の家族たちの様子を伺います。蘇生措置をとるべきかどうか・・・医者だったら仕事として蘇生措置を行なうべきですが、伊野は寝たきりの老人を介護している家族を気遣い、家族の意思を尊重しこのままにしておく判断をします。ただ、その後老人は息を吹き返すのですが・・・

A: このシーンで伊野という人物がはっきりわかったね。医者としてではなく、本人やまわりの人がどうなれば幸せになるのか。。。もしかしたら伊野本人は素性がばれないよう穏便に済むほうへと行動していただけと思っていたのかもしれない。しかし、次第に彼の行動は村人たちにとってなくてはならない存在へとなっていく。伊野も始めは何気ないきっかけで始めた医者という仕事だったが、徐々に心境に変化が・・・

B: それを決定づけたのが鳥飼かづ子(八千草薫)の外診を行なったときでした。一人暮らしのかづ子のお腹の異変に気づいた伊野は、わざとペンライトをかづ子の家に置き忘れ、その日の夜に再びかづ子の家を訪れます。

A: より詳しい検査をかづ子に勧める伊野。しかし、かづ子は子供たちに夫のときに味わった看病の辛さを味あわせたくないと、伊野に対して子供たちに病気のことは黙っててくれと頼む。伊野は本人の意思を尊重し一緒に嘘をつく決断をした。私自信が思うに、この作品の本題は"人を救うこととは何か"なのだろうと思う。それは医療という行為がそのまま救うことにつながっているのではなく、人と人とのつながりが救うことにつながっているということ。生かされても一人寂しく生きるのであれば救うことになっていないし、何も知らずに先立たれても残された人たちが救われないし。。。

B: この作品は考えさせられますね。この後、伊野は土砂崩れの事故に巻き込まれて気胸(胸膜腔に空気が入った状態)になった村人を救うことになります。初めて医者がどんなに責任の重い職業であるかということを伊野が感じ取った瞬間でもあると思います。

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A: 余貴美子扮する看護婦が黙って指示を出すコミカルなシーンだが、伊野の中では一世一代の出来事だったことだろう。今までは老人たちの話し相手になって適当に診療していればよかっただけだからね。

B: ここで伊野は"人の死"について考え出します。そこへ追い討ちをかけるようにかづ子の診断結果が送られてきます。かづ子は胃ガンに侵されていたのでした。家族の意見を聞くべきか本人の意思を尊重するべきか・・・伊野は本気で悩み始めました。今自分にできることはガンの勉強をし、ただひたすら薬を与えて回復を待つという地味なことしかできなかったのです。

A: 後にまわりの人は刑事から伊野が医者ではなく詐欺師であったことを伝えられ驚く。しかし、伊野に対しての怒りはなく事実をただ素直に受け入れるだけだった。そんな反応を刑事たちは不思議に思う。確かに詐欺という犯罪をし、免許もないのに医療行為までやってしまったことは悪いことではあるが、伊野は村人たちにとって本当に犯罪者だったのだろうか。犯罪者とは誰が決めるものなのだろうか。

B: だんだん難しくなってきましたね。法を犯したものは犯罪者ですが、その法は人間が勝手に考えたものですから、結局、人間が人間を裁いていることになりますからね。極論になりますが、被害者が犯罪ではないと判断するのなら法を犯しても犯罪者ではないということが言えるかもしれませんね。

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A: 重くなってきたのでちょっと話題変えよう。井川遥久しぶりに見たけど、やっぱり綺麗だね。

B: ほんと180度話題変わりましたね(笑)。この後、かづ子の娘である医師のりつ子(井川遥)に母親は健康だと嘘を突き通します。しかし、「今度の帰省は1年後になるでしょうね」というりつ子の一言で伊野は耐え切れない思いを爆発させ診療所を飛び出します。これ以上自分がここにいてはいけない、詐欺師の自分がここで診療し続けてはかづ子のためにならないと判断した伊野は、初めて本人の意思ではなく自分の意思で人を救うことを決意し、村を去りました。母親が胃ガンであるという事実を知ったりつ子は愕然とします。

A: 伊野が詐欺師であると知った村人たちの反応は刑事たちの予想外だったね。刑事の複雑な心境も伝わってきて、本当に細かな部分まで人間模様が描けている作品だと思った。事実を知ったりつ子が母親であるかづ子に自分の病院へ来るよう説得するシーン。娘の心情を悟ったかづ子はりつ子の病院へ行くことを決意する。この二人の会話シーンは非常にいい。やっぱり井川遥綺麗だなと思った。

B: またそっちにいっちゃいましたか(笑)。Aさん、井川遥お気に入りのようですね。こうして伊野のいなくなった村はまた何気ない元の生活へと戻っていくのですが、そこには何かを失った寂しさを感じさせます。そして、伊野は逃亡の途中、駅で刑事たちと接触します。このまま捕まるのかと思いきや、伊野は駅のホームから一瞬にして姿を消しました。

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A: これが刑事たちの出した答えだね。

B: そうですね。誰も不幸にさせていないのであれば、それは本当に犯罪と呼べるのだろうかということでしょうね。

A: 最後はりつ子の病院へ入院しているかづ子のもとへ配膳係に扮装した伊野が現れるというラストで終わる。最後の解釈は人それぞれあると思うけど、ほのぼのとした希望の持てるラストで私は非常に満足しているよ。

B: 温かい気持ちになりましたね。とても良い作品でした。



↓今回のコメンタリー作品

ディア・ドクター


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posted by はるさめ at 19:12 | TrackBack(3) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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ディア・ドクター
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